★以前から当工房オリジナルのイコライザーアンプEQC-1を購入された方から、あまりにも良い音なのでイコライザーだけではなくプリアンプも作らないかと言うお話がありました。

いろいろ考えていたのですが、EQC-1にはこれ以上の回路は入りません。
また、折角作るのならモノーラルアンプにしたいとも思っていました。

以前レストアした
mcIntosh C-8やMarantz 1の音を聴くとやはりクロストークが抜群です。モノーラルアンプとして電源回路が独立しているので左右のチャンネルの干渉が無く、まるで左右がバラバラに聴こえます。
どちらも素晴らしい臨場感です。

アンプはプリもメインも絶対モノーラル2台でステレオ再生がベストだとつくづく思いました。


★回路構成では、まずラインアンプは最初にmodel 1を参考に改良を加えるつもりで試作も作りました。しかし昨年末に所有機
mcIntosh C-8のレストアが完了し、この音を聴くと余りの音の良さにびっくりしました。
いつもMarantz7のバンブルビー機を聴いている耳で感じての驚きです。

以前もC-8をレストアし音もよかったのですが、この時はノイズに悩まされて音の良さの原因を考える余裕はありませんでした。
今回のC-8の音はこれまで聴いたことの無い良い音でショックさえ覚えています。

何がこの音を作り出すのか真剣に考えました。

回路図をジッと眺め、計算し、考え、、これは回路構成なのだ!!

当時や勿論現代の真空管やトランジスター回路(基本はどちらも同じ)でもこのような回路ではありません。何気ない回路の中にとんでもない発想が隠されていました。(専門的なので内容紹介は控えます)

恐らく当時でもこの回路構成がこれ程良い音に貢献しているとは開発当事者でも思わなかったかもしれません。
この後の
mcIntoshC20からは普通の回路になっています。
しかし、当時の評価でC-8の音を悪く言う記事を見たことがありません。
逆にイコライザーカーブ選択の特異性のみが目立っていました。
私はここまで凝る必要は無くMarantz1の方式で充分だと思います。

また、これまで良い音の基準である透明感、臨場感、音の輪郭などを得るためMarantz7では純正クラロスタット、バンブルビーなど使用する部品の品質や音の抜けの良さに目を向けてきましたが、C-8では根本的に考え方が違う方法で楽にこれを凌駕しています。

この為C-8では使用部品の銘柄にあまり拘らなくても自ずと良い音になります。これが以前のC-8レストア依頼機だったのです。

急遽、ラインアンプ回路を当初のMarantz1をベースに
mcIntosh C-8の要素も取り入れて設計変更を行いました。


(2020.2.7修正)
しかも「Marantz7の何が良いのか?」の項の終段でウエスタンアンプの良さにも触れていますが、この臨場感溢れる良い音の決め手であるインプットトランスや(ラインアンプの)アウトプットトランスも下記のステレオアダプター内に設置し、専用ケーブルで本体回路とダイレクトに繋ぎます。

またトーンコントロールも完全スルー回路を設け、スルーの場合このトーンの減衰量を増幅する最終段の真空管もジャンプします。
こうすることによりラインアンプのカップリングコンデンサーは最少の1個のみで動作できることになりました。勿論、これは厳選した物を使います。(最終的な回路はこのカップリングコンデンサーも無くしました。下記テスト機)

実際のウエスタンの多くのラインアンプでも段間はやはりカップリングコンデンサーで繋いでいます。
これ等の回路変更によりトーン回路をスルーした場合ウエスタンのシンプルなラインアンプに極めて近い構成となり、あの臨場感や音の余韻と広がりが作り出せると考えています。

ただウエスタンアンプでは臨場感は抜群ですが、音の解像度に関してはMarantz1,7やmcIntoshC-8の方が優れているような気がします。
やはりトランス結合を多用すると解像度が損なわれるのかも知れません。
この為、本機ではトランス入力と一般の入力を選択でき、プリの出力もトランス出力と一般の出力の2系統を設置しています。


★イコライザー部はEQC-1と同じ仕様です。(EQC-1の項を参照)

★結局構成としてはイコライザーはAudio Consolette、ラインアンプ及びPhono入力インピーダンス切換え機構はMarantz1と
mcIntosh C-8及びウエスタンアンプを参考にアレンジしています。


★オールドアンプに特有のラウドネスコントロールとカットオフ,フィルターは現代では不要です。
余計な回路があると音が悪くなるので割愛します。

★また、ボリューム類も一切使いません。#1やMcintosh C-8などのモノーラルアンプはバランスボリュームが無く、その分一般的なステレオアンプより透明感があります。恐らくどちらもMarantz7より余裕の透明感を感じます。

今回はボリュームの代わりにオーディオ用高級固定抵抗と23接点ロータリースイッチに依るアッテネーター回路で音量とバランス調整を行います。 (#7で実証済です) ⇒ 右稿に音質を記載。

トーン回路もボリュームを使わず厳選した固定抵抗+ロータリースイッチです。


(2020.2.6変更)
★Marantz6と同じくステレオアダプターもセットで製作しています。
こちらの音量調節も固定抵抗の23接点アッテネーター回路で構成します。(同時にC-8用も)

只今設計変更により、この#6タイプのステレオアダプターにはバランス入力1系統、パワーアンプへのバランス出力も1系統装備します。

これは最近のオーディオ機器には殆ど標準で装備されています。
やはり従来のRCAケーブルだけではシールド線の外側はアースではなく信号線のマイナス極になるため、長く引っ張ると厳密には外部からのノイズには弱くなります。

パワーアンプの中にもバランス入力から直接位相反転信号を取り込む機種があり、プリアンプ側からもバランス入出力が必要になってきます。
この為、この出力には真空管やオペアンプなどは使わずウエスタンアンプの様に2次側センタータップ付の出力トランスを使います。
前記「marantz7の何が良いのか?」の項でも言っているように、少しでも音が劣化する増幅器を介入させないようにしています。


★またEQC-1で定評の各カップリングコンデンサーの取り付けは、本機もハンダ付けせずに端子台にビス留めします。
しかも今度は各真空管のプレート抵抗も交換可能にします。
このプレート抵抗は音にかなり影響します。
特に今回のプリアンプには標準で音の抜けの良い巻き線抵抗を使います。
Marantz7kの改良レストアで実証済みですが、普通ここまで拘ったアンプはありません。

この主要パーツの交換可能機能は、これまで音の変化を楽しむためにカートリッジやMCトランス、高価なケーブル類の選択だけに留まってきた一般ユーザーにも、アンプの構成部品にも拘ることにより一歩踏み込んだマニアックな楽しみを味わうことができます。


★パネルは上の画像のようにMarantz1 + 6とよく似たデザインです。
しかし回路構成、つまみの数や配置、ランプの位置と形状、ロゴ及びフォントに至るまで感じは似ていますが全く別物です。
オリジナルを真似た単なるコピー品や復刻レプリカではありません。

ウッドケースに収まった姿は、当工房オリジナルのステレオ・イコライザーアンプEQC-1も美しいと言われていますが、こちらも極めて美しい姿です。



★以前開発したステレオ・イコライザーアンプEQC-1に関して、
Marantz1 や
mcIntosh C-8は今日ではどれもかなりグタグタの状態でメンテも皆適当に改造されるので当然当時の音は聴けません。

しかし、冒頭の画像のようにMarantz1では以前当工房でオールバンブルビー化と電源回路を含む殆どの消耗部品を正規仕様に交換し、オリジナル状態に戻ったその音色は極めて美しく私の心に刻まれています。

いつもオールバンブルビー化にレストアしているMarantz7の音も勿論極めて良いのですが、このMarantz1の音はより味わい深く透明感や臨場感はMarantz7の比では無く、クラシックを聴くには絶好です。

この音を現代に蘇らせようとステレオ・イコライザーアンプEQC-1を作りました。
期待通りの音になり、充分満足しています。

今度はイコライザーだけでは無くラインアンプも含めたモノーラル・プリアンプとしてオリジナルMarantz1 や
mcIntosh C-8の音よりも良い音、取分けどちらも低音が少し甘い欠点を補い、より歯切れの良い澄み切った音を目指しました。

実際の下記試作機でも音色を確認しています。


★このように本機はこれまでMarantz7を良い音にレストアして来た経験に基づいて設計し、Marantz1や7,
mcIntosh C-8を超えた究極のプリアンプになります。

一応これは飽くまで私自身が楽しむ為に開発していますが、興味がある方にはお譲りします。


★製作も進み具体的な形と音が出せるようになりました。

 → こちらです

Marantz model 1 type モノーラル・プリアンプ製作

Audio Consolebox MKe-1

[ セブン再生工房 ]

2019. 7. 20 初掲載
2020. 3. 16 
更新

当工房オリジナルアンプを開発しています。

Marantz model 1の高域低域独立イコライザー調整つまみ。
EQC-1同様、今回も同じ配置です。

Audio Consolebox MKe-1

セブン再生工房へ戻る。


★下右画像のMarantz 1 はS.B.Marantzが開発した最初のプリアンプです。このため60年も経った現代では上記のような綺麗なものは殆どありません。
また当時はまだモノーラル時代なので、後のステレオ時代になるとステレオで聴くにはもう一台探さなければなりません。
この為、同じものが揃うのは珍しく中には[Audio Consolette] + [model 1]の組み合わせで聴く方もいました。

実は Audio Consolette と model 1 の回路は全く違います。使う真空管も違うのです。
当然出てくる音も違うでしょう。
しかも現代まで残っているものは当然これまで部品も無いので幾多もの改造が繰り返され何とか生きている状態です。

これでは幾ら幻の名器といえども聴くに耐えない、眺める?にも耐えない、ゾンビ化した代物です。

そこで、このmodel 1を現代に蘇らせるために当工房オリジナル機を開発しています。

またウエスタンアンプの素晴らしさも取り入れた構成となりました。

★こちらはMarantz7オリジナルSN.18000番台(売却済)に取り付けたアッテネータ回路です。
各抵抗は1本1本値の違った高級オーディオ用の固定抵抗を使用し、#7用純正クラロスタットを忠実に再現したAカーブの出力特性を持ちます。

これによりまるで5月の青空の如く抜けるような中高音と床の反響音が区別できる位ダイナミックな重低音が堪能できます。

本機MKe-1の実験用に開発しました。


音は、ボリュームが無くなるとこんなにも変るのかと思うくらい一片の曇りもない極めて透明感のある音です。

同じ#7の良品バンブルビー機でもここまでクリヤーではありません。

まるでデジタルアンプとヘッドフォンで聴いているような透明度で、しかも真空管アンプの優しさはそのまま、

実に良い音です。



★今、ビルエバンス(JAZZ)を聴いています。歯切れの良いシンバルの余韻が曲の演奏中ずっと響き渡っています。

こんなに長い間響いているとは、、、同じ曲をこれまでのプリアンプでは聴き取ることができませんでした。

シンバルは一度叩くと簡単に音は止まらないのですね。ずっと余韻が残っています。手で押さえれば止まるでしょう。しかし演奏中は忙しくて?止められない。

このアンプで聴くまでは廻りの音にかき消されて、こんなに長く残っているとは気が付きませんでした。



★今度はクラシックです。
いつものバイオリン協奏曲を聴くと、バイオリンのフレーズの合間に微かにクラリネットが合いの手を入れているではありませんか!

これまで全く気付かなかった音です。

鳥肌が立ってきました。。。

ウエスタン 104ラインアンプ

ステレオ・イコライザーアンプ EQC-1

当工房所有機 mcIntosh C-8 モノーラル・プリアンプ

以前当工房でオールバンブルビー化にレストアしたMarantz model 1